
肛門疾患
はじめに

あなたのおしり大丈夫ですか?
恥ずかしがらずにまずはご相談を。
肛門は繊細な機能を持っている大切なところです。でも場所が場所だけに、トラブルがおきても相談することもできず、一人で悩んでいる方も少なくないと思います。放置したままにすると、ますます悪化してしまうこともあります。また、痔だと思い込んでいると大腸癌、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、クローン病などの病気が潜んでいることもあります。おかしいと思ったら恥ずかしがらずに、是非、早めの受診をお勧めします
内痔核(いぼ痔) -痔の中で一番多い-
内痔核とは

おしりはもともと血管の豊富なところです。便を出すときのいきみなどによって、おしりに負担がかかり、静脈がこぶ状に大きくなってきます。さらに固定がゆるくなり、おしりの外へ出てくるようになります。
症状
脱出と出血が主な症状です。便が出た後に手で押し込むようになったり、出っぱなしになって不愉快な思いをすることがあります。出血は紙につく程度から、便器が真っ赤になるほどふき出ることもあります。
当院の治療法
便秘や下痢をしないように食生活に注意します。またトイレの時間が長くならないようにすること、またいきむ時間を短くすることなど、排便習慣を見直します。まず、のみ薬、坐薬、ぬり薬で治療します。多くの患者さんで、症状の改善が期待できます。症状を繰り返す場合は手術治療を考慮します。当院では主に次の根治手術を行っています。
- 結紮切除術
余分な痔核を通常3ヶ所切除します。内痔核手術のなかでは最も根治性があり、スタンダードな治療法です。原則3泊4日ほどの入院となります。硬化(注射)療法を併用するときもあります。
- 硬化(注射)療法
切らずに痔を治す手術といわれています。ALTAと呼ばれる薬を痔核内に注射します。痔核は一時硬くなり、その後徐々に小さくなってきます。この治療は指定の講習を受けた医師のみの治療方法です。日本で治療が始まって2019年現在で、15年目になります。切除術より再発の心配があるのですが、日帰りの治療が可能です。1泊2日の入院で治療することもあります。
血栓性外痔核(いぼ痔) -ぷくっと膨れてちょっと痛い-
血栓性外痔核とは

おしりの出口の皮膚に、5~20mmくらいの大きさで、少し硬いいぼのようなものが急にできます。血のかたまり(血栓)で、たんこぶみたいなものです。
症状
3~4日間、おしりの痛みがあります。
当院の治療法
基本的にはぬり薬、のみ薬などで治療します。ほとんどは2~4週間で、腫れはおさまって治ってきます。大きくて症状の強いものは日帰りで処置をします。この処置によって早く治ることが期待できます。
肛門周囲膿瘍 -激しく痛い-
肛門周囲膿瘍とは

直腸とおしりの境目にある肛門小窩(粘液を分泌する肛門腺の開口部)というくぼみから、大腸菌などが入ってきて感染し、おしりの周囲に膿がたまった状態です。
症状
肛門周囲膿瘍は座ることも難しいほどの激痛です。熱が出ることもあります。
当院の治療法
局所麻酔で皮膚を切って膿を出します。痛みがなくなり楽になります。基本的には日帰りで処置をします。
痔瘻(あな痔) -ちょっと痛くて下着が汚れ不愉快-
痔瘻とは

おしりの近くにできる膿の管です。多くは、肛門周囲膿瘍の膿が出たあとの、管が残った状態が痔瘻です。まっすぐな管、曲がった管、枝分かれした管などいろいろな形態があります。
症状
おしりが腫れぼったくなって痛かったり、膿が出て下着が汚れたりします。治ったように思えても症状が繰り返されます。
当院の治療法
手術が唯一の治療法です。痔瘻の管を開放することが手術の基本です。括約筋(おしりをしめる筋肉)をできるだけ傷つけないような手術を行うこともあります。3泊4日ほどの入院で治療します。
裂肛(切れ痔) -女性に多く、痛くて出血します-
裂肛とは

ほとんどは便秘が原因です。硬い便、太い便が出るときにおしりが切れるのです。
症状
出血とおしりの痛みです。便をした後もズキンズキンとする痛みが続くときは慢性化している可能性があります。
当院の治療法
治療の基本は便秘をなおすことです。食生活に注意し、柔らかい便がスムースにでるようにします。また、ぬり薬や飲み薬を使用します。どうしても治らない場合、また慢性化しておしりが狭くなった場合は手術を行うとよくなります。おしりを少し広げる手術で、3泊4日の入院となります。
その他のおしりの病気
直腸脱、直腸瘤、肛門掻痒症、肛門部ヘルペスなどの診断治療をしています。
- 直腸脱
高齢の女性に多く、おしりや骨盤の筋肉が少しゆるんだために、直腸がおしりから出てくる病気です。手術が唯一の治療法です。腹腔鏡を使った手術方法、おしりからの手術法など行っています。
- 直腸瘤
直腸が膣側に膨らむ病気です。便がまっすぐ肛門に向かわず、膣側に進むので、膣の後ろ側をおさえて便を出すようになるのが特徴です。お産などによって、直腸と膣の間の壁が弱くなっていることが原因です。生活に支障が出る場合は手術で治療します。
- 肛門掻痒症
かゆいので、ついつい手で引っかいたりして悪循環になります。おしりを石鹸でごしごし洗ったり、過度の温水洗浄が原因のことが多いようです。カビが原因の時もあります。ぬり薬などで治療します。
- 肛囲ヘルペス
ヘルペスウィルスが原因です。皮膚の神経と関連するので、おしりがチクチク痛く、小さな湿疹や水疱ができます。ぬり薬で治療します。
その他にもいろいろな病気があります。おしりでお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。
- Q1.おしりの診察はどうするのですか?
- A1.診察は横向きです。下着を膝までおろしてバスタオルでおおいます。そして、おしりだけ見えるようにして診察します。診察は1分以内です。診察室はもちろん個室ですが、カーテンでベッドを仕切ってプライバシーに配慮をしています。医師、看護師と話をしながら、リラックスした状態での診察なので安心してください。
- Q2.女性医師はいますか?
- A2.います。前もってご相談ください。
- Q3.麻酔の方法について教えてください?
- A3.脊椎麻酔、いわゆる下半身麻酔です。腰に細い針で注射をして麻酔します。手術中は全く痛みを感じません。
- Q4.費用はどのくらいかかりますか?
- A4.標準的な3泊4日入院の手術で3割負担なら約7万円くらいです。
- Q5.入院日数は決まっているのですか?
- A5.標準は3泊4日ですが、手術の説明をして、相談のうえ入院日数を決めるようにしています。手術内容にもよりますが、短期入院、日帰り治療も可能です。
- Q6.痔は悪くなったら早めに手術したほうがいいのですか?
- A6.普通、命に関わる病気ではないので、手術を早めにしたほうがいいということは決してありません。しかし、病状によっては、劇的に症状が改善するので、もっと早く手術しておけばよかったと思う人は多いようです。手術がベストかどうか、相談しながら治療方針を決めてゆきます。
- Q7.手術後の生活はどうなりますか?
- A7.手術後3~4時間で歩行ができるようになります。食事は当日の夕食から始まります。翌日からはシャワー、入浴も可能です。痛みについては個人差がありますが、ほとんどの患者さんが思ったより痛くないと言われます。手術方法の進歩、疼痛管理の進歩によると思われます。便が柔らかくなる薬などを飲んでいただきます。退院後、1週間以内には皆さん仕事に復帰されているようです。
- Q8.痔にならないために、日常生活で注意することがありますか?
- A8.便秘、下痢をしないよう規則正しい生活、食生活を心がけてください。
- 長時間の座位や車の運転をさけ、適度に休憩して体操などしましょう。
- 便は全部を出し切ろうとせず、また、いきみはできるだけ短い時間とし、5分以内にはトイレから出るようにしましょう。